斬らなイカ?

武術、武道、日本刀とか。

『武蔵流剣術』DVDフォローアップ体験会に行ってきました

10/28に開催された、高無宝良先生の『高無宝良 武蔵流剣術 - 宮本武蔵の二刀流 実技とその変遷』DVDフォローアップ体験会に行ってきました。

DVDは今年5月に発売された、二天一流および二天流の技法、コンセプト、稽古方法などを収録されたものです。今回はその内容を実際に体験できる*1という貴重な会でした。

DVDについてはレビューを書いているので、こちらも参照してください。

nowsprinting-ma.hatenablog.com

体験会の流れ

先のレビューの通り、このDVDでは型の紹介から入るのではなく、二刀で戦う上でのコンセプトとしてまず「十字受」の技法を紹介し、そのバリエーションや受けからの変化を中心に据えた構成になっています。

従って体験会も、ウォームアップとして素振りと歩法の後、十字受とそのバリエーションを二人一組で稽古するという流れでした。

また、これは途中でお話されたのですが、相手の太刀筋や間合い(拍子・タイミングと同義)によって色々と応じ方はあるが、判断*2つかない場合は正面で十字受してそのまま押しきる、とのこと。 この、"other"の選択肢を基礎として最初に稽古するのはとても理にかなっていると思います。

十字受

DVD収録順とは異なり、まず二天流の十字受から。これは武蔵の壮年期の技であり、後年の二天一流の技に比べて身体を大きく使うものです。その後、二天一流の"静かな"十字受に入りましたが、基本的な身体の使いかたは同じであることを強調されていました。

左右の刀で相手の攻撃を"体の中心で"受けるというのは意外と難しいのですが*3、中心で受けることができてはじめて、そこから適切な変化ができるわけです。かなり鍛錬し応えのある技だと感じました。

ちなみに、たまたま袈裟斬りに対する十字受のときに高無先生に相手をしていただいたのですが、私の袈裟斬りを先生がぴったりと中心で受け止められたときの感覚がとにかく「すごい」の一言で、とても良い経験をさせていただきました。

越す拍子、付ける拍子

「越す拍子」は、遠い間合いで相手が自分の刀を打払いにくるという想定で、この想定自体は英信流の組太刀にもありますが、これを外して下向きに十字受するのは二刀特有で新鮮でした。とにかくこのシチュエーションで体をかわしたり入身になったりしないのは二刀ならではでしょう。

また「付ける拍子」は、通常の下段ではなく、両刀を下ろした構え(武蔵の肖像画にあるあれ)によって起こりうる近い間合いだと思うのですが、これも非常に二刀の特性が出ている技で面白いものでした。

突きに対する十字受

最後に、一人一回ずつでしたが、槍による突きを十字受して詰めるという体験もできました。基本通りの十字受で突きにも対処できるというものですが、突きを身体で避けてしまうとかえって引き込んでしまうなど、メンタルが試される部分もありそうでした。

所感

DVDのコンセプトもとても良いものでしたが、さらに今回のような体験会が開催されるのは大変ありがたく、ぜひさらに反響があって第二回も企画されると嬉しいな、と思いこれを書いています。

全体に良い雰囲気でしたし、懇親会でも色々な流派の方と武術の話ができ、とてもとても有意義な会でした。高無先生ならびに関係者、参加者の皆様、ありがとうございました。

*1:しかもDVD購入者にはわずか¥1,000で!

*2:頭で考えて判断するわけではないのですが、いい表現がなかったのでこのままで

*3:ひとつ言い訳をすると、持参した小刀が二刀で使うものより短かったため中心で捉えるのがより難しかった、というのはありますが、言い訳。

形意五行槍 特別講習会

9/16に開催された『形意五行槍 特別講習会IN文京』に参加してきました。主催は旺龍堂の小幡師。

形意拳(Xing Yi Quan)の開祖、姫際可(Ji Jike)は槍の名手で、形意拳の代表的な技である『五行拳』は槍術をベースに作られているそうです。その槍術が本講習会で教えて頂いた『形意五行槍』とのこと。

攔・拿・扎

五行槍に先立って、槍の基本的な操法の練習と、「攔」「拿」「扎」という、内転・外転の巻き落としから突き込む動作を練習。

「攔」「拿」「扎」は中国槍術には共通する動作のようですが、形意拳内家拳なので、大きな動作でなく、内力を使った(見た目は)コンパクトな「攔」「拿」を行なうのが本来とのこと。今回は初心者向けなので、基礎的な動作で教えていただきました。

立ち方や歩法は形意五行拳とほぼ同じらしく、私は見よう見まねで*1

形意五行槍

五行槍は套路ではなく「劈槍」「崩槍」「鑽槍」「炮槍」「横槍」という5種の槍の操法で、それぞれ若干のバリエーションがあります。

それぞれ順番に、対応する形意五行拳の紹介*2に続いて槍の操法の解説、そして練習という流れで進んでいきました。個々の技だけでなく、前に進んで折り返すときの「回身法」もそれぞれに決まっており、たった5種類とは言えないボリュームでした。

まず長柄の武器をちゃんと扱う(腕力でなく体幹で扱う)ことが難しく、さらに「炮槍」の穂先を回転させる動作などはとても一朝一夕ではできないものです。

人数も多かったので、練習は3班に分かれて順番に。つまり見取り稽古の余裕があったのですが、槍の扱いになかなか慣れないこともあって順番を通すだけで精一杯。

所感

小幡師は、武器術に共通する事項として、丹田・腰の気を充実・安定させ、他は柔らかく使うということを強調されていました。

私、刀より重いものを振り回したことが無かったもので、(さすがに槍に振り回されることは無いものの)腕力で振っている感触がありました。より良い身体の使いかたを身につけるためにも、しばらく公園などで稽古していこうと思います。また、そんな目的で練るのにちょうど良いボリューム*3であるように思いました。

書き忘れていたので追記。純粋に、武器術楽しいです。長柄を振り回すの楽しいです。

参考

小幡師による形意五行槍の動画

www.youtube.com

小幡師の師である趙玉祥老師のDVD。内家拳の「攔」「拿」「扎」についてや、梅花槍の表演が収録されています。

趙玉祥老師 中国伝統武器術 [DVD]

趙玉祥老師 中国伝統武器術 [DVD]

*1:他の参加者の方は形意拳経験者っぽい方が多かった模様。私は全くの素人です

*2:他の門派の形意拳を学んでいる方がいることもあり、小幡師の山西派車氏形意拳の技を比較のために表演

*3:技の種類という意味です。奥は深そうなので…。

東アジア武術国際会議2017 参加メモ

9/10に開催された『東アジア武術国際会議2017』(主催:東アジア武術・武道フォーラム)に行ってきたので、雑ですが聴講メモ。

このカンファレンスは、東アジア武術(日本・中国・韓国の武術・武道)をターゲットに、武術性(実用性)と応用性の観点から今後の進むべき道を考える、という趣旨のもと開催されました。

大きく3つのセッションがあり、日本武道の武術性とスポーツ化について、中国・韓国の武術について、武術人口の減少と今後について、それぞれ有識者により語られました。

なぜ武術性を問うのか? 武術・武道研究の根本問題

志々田文明先生の全体基調講演から。

  • 戦後、武道の禁止期間を経て、武道に実用性は不要という倫理的規範ができあがった。試合では勝利主義に傾き、型稽古は正確に動くことにこだわる形式主義や衒いが生じて本質から遠ざかる傾向がある。
  • 価値の多様性。オリンピック競技大会を志向することによる経済的価値、実用性の維持を志向することによる芸道的な文化価値。多様性は良いことだが、実用性という本質は大事。
  • 今回は方向付けは意図しておらず、多様性、揺らぎを考える場にしたい
  • 根本問題として、各流派・門派で閉じられた伝承もあるため、揺らぎを把握する以前に比較・分類が難しい
  • 名前をつけることで理解できる一方、名前に縛られる

シンポジウム1:日本武術・武道における武術性の問題

基調講演:武術の実用性とその応用

大保木輝雄先生

  • 剣術・剣道は、時代に見合った実用性を模索してきた
    • 実戦文化(15〜17世紀):護身、戦闘において勝つ技術
    • 芸道文化(17〜18世紀):江戸時代の武士が身につける剣術。「身を捨てて」勝ちを得るのが武士のあるべき姿
    • 競技文化(19〜20世紀):武士道(明治武士道)の体現、その教育手段としての武道
  • 実戦・芸道・競技の3つの実用性が技能評価の「一本」に集約されている。「一本」の意味と価値を問い続けることが武道の本質に迫ることになる。

日本の剣術・剣道における形技法と競技技法の実用性について

加藤純一先生

  • 武術の分類。武器か素手か、対人的か型か
  • 中世〜近世、型剣術。流派ごとの型
  • 近世〜近代、江戸中期に「しない打ち剣術」が誕生。「きる」から「うつ」に。
  • 現実(生死)→虚構(安全性の確保)
    • 斬り合い→型剣術→しない打ち剣術→現代剣道
  • 甲陽軍鑑』にある「脇指心」。しない打ち剣術でも、斬る意識は内包していた
  • 明治になり、現実的に斬らない世界。ふたつの選択肢
    • うつに特化 → しない競技
    • きる心を残す
  • 現在、全日本剣道連盟では「日本剣道形」や「木刀による剣道基本技稽古法」で、刃筋や鎬の使いかたを指導している

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展示された「しない打ち剣術」で使われた防具

柔術・柔道史おける武術性の問題:柔術試合・嘉納治五郎・富木謙治

中嶋哲也先生

  • 柔術・柔道の試合において、当身技を使用できない問題
  • 幕末、柔術も試合をしている
    • 嘉納治五郎が学んだ天神真楊流起倒流は多く試合を行ない記録を残している
    • 試合記録から、当身は使ってなさそう(決まり手として出てこない)
    • 当身は日常(喧嘩・護身)用、戦場では「組討」が重要
    • 当身は有効だが、試合で死傷は困る
  • 「崩し」の発見。打撃としての当身から、崩して倒す当身へ

鍔迫り合いに見る剣術と柔術の接点:剣術の中に潜在する柔術性を考察する

佐藤忠之先生

  • 嘉納治五郎「柔道は剣を持てば剣道になる」「柔道の中に剣道がある」
  • 柔術(道)の間合い、剣術(道)の間合い。その中間に「体当たり」「鍔迫り合い」「体押し」がある
    • 相手を崩す理論は、柔道と一致する
  • 柔道では間合いが近いので目付けに言及されないが、剣道的視点を持つこと習得できる(遠山の目付け)

討論

  • 技をかけるとき、針の穴に糸を通す瞬間がある
  • 「刀道」でなく「剣道」であるということ
    • 剣とは反りのない両刃のもの。文殊菩薩が持っている。悪を断つ意味(外部的にも、内面的にも。両刃なので自分にも刃が向いている)
    • 剣道では刀を使うが、剣の持つ意味を踏まえて「剣道」となった
    • 刀の場合、自分のほうを向いてる刃は相手の刃。相手と自分のセットで剣の意味を持つ
  • 死を覚悟できるかが、実用性のポイントではないか?
    • 新陰流の合撃(がっしうち)
  • 柔道は護身を実用性と言えるが、剣道では傘などで護身するのか、それを実用性と言うのか
  • 剣道では「打つ」と指導。「斬る」を避けてきた?(考えないようにしてきた?)
    • 子供が「人を斬るために剣道をやっているのではない」と言った
  • 教育的な実用性は「有益性」と考えるべき。実用性とは分けて考える
  • 剣道は最悪の事態を想定している。それを体験しておくことで、日常の事態には対処できる
  • 一本
    • 剣道:以前は、勝敗より、良い一本がでることが大事とする人が多かった。大会後も「あの一本が良かった」等。
    • 柔道:以前は、粘って掛けた大外刈りなどの一本は恥ずかしいという意識。強引な技は一本を取らない審判もいた。
    • 武術性は本来の「一本」の追求にあるのでは

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招待講演1:Heritage and the future of East Asian Martial Arts in the development of preventive and therapeutic agonology

Archives of Budo 編集長でもあるローマン・M.カリーナ(Roman M. Kalina)教授

  • すべてのコンバット・スポーツは、フェイス・トゥ・フェイス
  • 現代人はモバイル・インターネットの奴隷。バーチャル・リアリティの世界に生きている
  • 現代人はテクノロジーをコントロールできているのか? もしくはその逆か?
  • MMA、ブラッド・スポーツ、サッカーでも乱闘につながる
  • アゴノロジー(予防と治療の包括的理論?)
    • このあたり知識不足で書き様が無く割愛。申し訳ない。論文読まないと。

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シンポジウム2:中国・韓国武術における武術性の問題

基調講演:誰の、何のための武術か? ― 東アジア武術の比較枠組みを求めて

池本淳一先生

  • 日本では、武道=武士=支配階級のもの
  • 中国では、重文軽武。武術は庶民の准軍事力
  • 中華民国時代、人民論、生物学的進化論が流行る。中国人は弱種なので強種になろう→救国の道→体育としての武術の再発見・再評価→「国術」に
    • 強身(武術訓練)→強種(人種改良)→強国
    • 公的価値
    • 反発
      • 地方の門派(私的利益が欲しい)
      • 文化人による批判
    • 応用性のみ重視し、全国運動会(日本でいう国体のようなもの)で武術性の強い種目(散打など)が排除されていく
    • 誰の、何のための武術か?

中国武術の競技化における衝突と変遷 ― 1895年から1945年を事例に

荘嘉仁先生

  • 清代には「武科挙」により武術で官職につくことができたが、袁世凱による軍の様式化(1895)の後、1898年に廃止された
  • 義和団事件(1900)でも中国武術の実用性に疑問が持たれた
  • 武術は「体操」として扱われていく(このあたりから、上の池本先生の話と被る点は割愛)
  • 全国運動会では、第5回にはあった散打(拳・器械)競技が、第6回(1935)から無くなっている。摔角(シュアイジャオ/相撲的な種目)や弓、套路の表演は残っている。

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荘嘉仁先生のスライドより。全国運動会の種目には弓もあった模様

中国散打競技の38年

鄭旭旭先生

  • 中国武術は「套路」と「対抗」がある。対抗の中にも種目がある
    • 短兵(剣を模したもの)
    • 太極拳推手
    • 散打
  • 中国の「戦後」は1949年(日中戦争→内戦の後)。以降、改革開放(1978)までは套路しか行われていなかった。
  • 1979年から散打競技の模索を開始
  • 散打は、今ではすでに成熟した国際性競技種目になった
  • スポーツビジネスとしてはまだうまくいってないが、今後発展させていきたい

韓国の武術における武術性の問題

朴周鳳先生

  • 韓国の武術はほとんど戦後のもの。戦前からのものは少なく、「テッキョン」「シルム」くらい
  • 近代武術:テコンドー(空手がベース。命名(1956)、独自の型(1966)、ルール改正などを経て今の形に)
  • 伝承武術:テッキョン
    • 重要無形文化財(1983)。しかし原型の問題がある
    • 1972年には11の技しかなく、重要無形文化財に採択されなかった
    • 1982年、100以上の技、型の創作などが加わり、採択された
  • 復元武術:18世紀の史料(兵法書)をもとに復元
  • テコンドーは、「する」から「みる」へ。テコンドーパフォーマンス(K-Tigersなど)、ノンバーバルパフォーマンスなど。

時間が押したため、このセッションの討論は省略。

招待講演2:The actual utility on martial arts in Europe

マサリク大学のデンコー・レグリ(Zdenko Reguli)教授

  • ヨーロッパにおける武術は、騎士道、フェンシング、レスリング、ボクシング、そして日本武道(西洋・日本からの渡航者によってもたらされた)
  • フランスに嘉納治五郎が来訪したのが1889年。その後、1900年前後に相次いて各国に柔術・柔道のスクールができた。
  • 合気道は、仏・英には1950年代、チェコは1990年に最初のクラブができた
  • 競技的なコンバットスポーツ、護身術、武道はそれにとどまらない
  • 生物学的、心理的社会学的、ノーロジー
  • 継続的に、終わりがない。子供、若者、大人、老人
  • オープンでグローバルな社会で武道は進歩する
  • ヨーロッパにおける武道の未来のために
    • 道教師の育成
    • 異文化交流
    • 普及のための新しい方法

パネルディスカッション:現代社会における武術のフロンティア:継承と維新の弁証法

武道具マーケットの縮小とそのグローバルな再生プラン

武道具店『粋陽堂』の横地浩紀先生、池本淳一先生

  • 刀匠は、登録200人、実働50人ほど
  • 木刀職人は、4人(=4社)。すべて宮崎県都城市、10年以内に2社は廃業予定
    • 全国の需要の99%をまかなう
    • 機械化されておらず、ノギスで測り、カンナで削ってる
  • 材料の樫の木は2年くらい前に絶滅*1。あと50年くらいで作れなくなる
    • 新たに育てようとしているが、生育に100年、乾燥に50年かかる
  • 単価も安く、後継につがせて苦労させたくない。自分も早く引退したい

ニューメディア・セミナー文化と武術

高無宝良先生

  • 大きな組織に属していないので、SNS、主にTwitterFacebookを使って海外含めた武術家と交流している
  • 海外の中高年:空手・柔道が普及した世代。武術映画。ニンジャが好き。
  • 海外の若年層:マンガ、アニメ。ニンジャが好き。
  • SNSのメリット:特に若い人、ライト層に宣伝しやすい
  • デメリット:あまりやる気のない人、気軽な気分の人が来やすい。中高年層に訴求しない
    • 情報漏えいの恐れや、伝統武術を詐称する団体も

武術と観光・地域

池本淳一先生

  • 若年層減少、高齢者増大。スポーツ人口も同じ傾向
  • 種目にもよる。サッカー、マラソンは増加傾向
  • 武道は減少、15-19歳が希少、20代激減(学校を出たら辞めてしまう)
  • 地方は人口流出 → 消滅可能性都市
  • 武道も消滅可能性の高い種目
  • 地元道場の衰退。コミュニティとの断絶
    • 「まちづくり」に貢献することで改善できないか?
    • 自主財源、国内外ネットワーク、アイデンティティ → 観光がやっていること
  • 事例

コメンテーターからの質問

  • 見る側、やる側。90年代に格闘技が流行ったけど、やるひとは余り増えなかった。観光資源だけではやるひと増えないのでは?
    • まずは情報発信
    • 見る人は見る止まり。敷居を下げる努力が必要。一般人の武術に対するイメージは「きもい」「こわい」
  • 学校の体育祭でカンフーの集団演武をやろうとしている例がある。学校体育へのアプローチは?
    • 体育祭などにからんでいくのはアリでは
  • SNS、情報のコントロールの件
    • 武術の秘密性。江戸時代は藩の戦力であり秘匿したが現代では余り無いはず。ほかに、相手の人格(危ない技を教えてよいか)も
    • AIの発達で人間の活動分野は減る。武術の持つ、内部に向かって掘っていく方向性は人間独自のものとしていいと思う
  • 木刀の値段について
    • 道家はお金を出さないが、オタク、外国人は5倍くらいでも買ってくれる
    • 新素材は今のところ実用的なものがない。並行して検討しつつ、樫の木を植えるしか無い
  • 中国武術をやるひとが減っている印象がある
    • 知りたいだけの人は多いが、なかなか取り込めない
    • 術を学ぶだけでなく、人、国、など文化を学ぶところまで行き着かない。そこを情報発信でなんとかならないか
    • ネットなどで情報(動画など)が増えてるが、質が下がっている。また見る側も無批判に持ち上げる傾向があり見る目が下がっていると感じられる(昔は批判コメントがたくさんついた)。ちゃんとした情報も出していけないといけない

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[9/15追記] Twitterで教えていただいたのですが、宝蔵院流槍術でも樫材の調達は問題だそうで、自ら植林するなどの取り組みと、またそのための募金を募っているそうです。 http://www4.kcn.ne.jp/~hozoin/161031syokujubokin.htm

所感

自分は主に古武道・伝統武術なので「スポーツ化」に直面しているわけではないのですが、他国の武術もふくめてスポーツ化の問題や、伝承についての問題(過去も未来も)について考えることは多いので参加しました。

単純に「明治の廃刀令が」「戦後の武道禁止令が」ではなく、武術・武道の成立から順を追って考え直す良い機会となりました。難しい問題であることに変わりはないですが、引き続き考えていきたいと思います。

中国伝統武術については、文化大革命による離散・衰退があったくらいの知識だったのですが*2、戦前から色々あったのですね。

その他にも色々と興味深いお話が聞けたほか、演武、昔の武具の展示などもあり、とても有意義な会でした。主催・関係者ならびに登壇された先生方、ありがとうございました。

参考

近代日本の武道論: 〈武道のスポーツ化〉問題の誕生

近代日本の武道論: 〈武道のスポーツ化〉問題の誕生

日韓「剣道」: KENDOとKUMDOの相克と未来

日韓「剣道」: KENDOとKUMDOの相克と未来

中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―

中国武術史 ― 先史時代から十九世紀中期まで ―

*1:木刀用の生木は全て伐採し尽くしたという意味。乾燥工程のものが50年分あるだけとのこと。[9/13追記]

*2:『近代中国における武術の発展』を積んでいることがバレますね…

『ヨーロッパの正統な中世ドイツ剣術 西洋剣術入門 両手剣ロングソードの使い方』レビュー

キャッスル・ティンタジェル城主であるジェイ・ノイズ師による実演と解説DVD。Amazonでは品切れで割高ですが、出版社直販なら定価で買えます。

babjapan.tp.shopserve.jp

武術に限らず「入門」というジャンルは難しく、特に「どこから」「どこまで」書くか(DVDなので"撮るか"?)が問題で、つい基本・常識と思っていることを端折ってしまったり、また逆に基本に寄りすぎて面白みを削ぎ落としてしまったりされがちです。

その点、本DVDは、まず中世ドイツ剣術の特徴・エッセンスの紹介を多めに取り、次いで立ち方、歩法、剣の持ち方を丁寧に説明してから構えや技の紹介に入ります。 所々、日本刀や日本の剣術との違いという観点で説明されていたり、正面からの絵だけでなく側面や相手の視点からの映像があったりと、とてもわかりやすく感じました。

また、終盤ではアドバンスレベルの技としてディスアームやレスリング的なもの、スパーリングのルール、鎧の種類による有効な技の違いの紹介もあり、充実した内容でした。

以下、ドイツ剣術・ロングソードの特徴的な部分を中心にメモ。

Chapter 1: ドイツ剣術ロングソードについて

  • ロングソードの技法は、14世紀ドイツのヨハネス・リヒテナウアー(の弟子の残した書物)から。17世紀に失伝したが、20世紀にインターネットを通じて世界中で研究が進み復元されたもの。
  • 一般に思われているような力で叩き合うものではなくテクニックがある。映画やフェンシングと違い、防御・攻撃の2モーションでなく、攻撃と防御を同時に行なうシングルタイムアタックが特徴。
  • レスリングの技術も剣術の範疇
  • バインド*1で相手の剣をコントロール、相打ちを避ける
  • 剣は体の中心でなく外側に構える(後で出てきますが、日本剣術で言う八相や脇構えに近いものはあるが、正眼のようなものは無い)
  • 両刃なので、フロントエッジだけでなく、バックエッジを使う技もある
  • 日本刀と違って、重心が刀身の腰のあたりにある(この差は技にあらわれます)

Chapter 2: 足さばき

  • 史料に出てくる上級者向けの立ち方も紹介した上で、初心者が練習するために、より腰を落として足先を開いた立ち方を基本とする
  • ただの歩法でなく、移動しながらの斬撃にもつながるため重要だと強調

Chapter 3: グリップ

  • 右手親指は刀身のほうに立て、エッジの向きを変えるのに使う

Chapter 4: 基本の構え

  • 構えは静止したものではなく、動き(技)の起点と終点の姿勢である、という考え。さらに、終点は次の技の起点でもあり連続していく。
  • リヒテナウアーの構えは4つ。フォンターク(屋根から)、オックス(雄牛の角)、プフルーク、アルバー(愚か)
  • 弟子のリンゲックが追加したもの*2のうち2つ。シュランクフート、ネーベンフート

Chapter 5: 基本の斬撃

  • 当時の剣術指南書から復元しているため、どうしても奥義のような技が多くなる。なので、基本技は手に入る資料をもとに再構築して教えている

Chapter 6: 達人の斬撃(マイスターハウ)

  • カリの人向け:
    • ツベルクハウ:横向きのアバニコ
    • シールハウ:縦向きのアバニコ

Chapter 10: ヴィンデン(巻き)とバインド

  • カリの人向け:
    • フィデュル・ボウ:スネークなディスアーム。刀身に腕を巻きつけて、十字鍔を握って無力化。

Chapter 11: 鎧を着ない戦闘の基本ルールと実践例

  • スパーリングのルールを紹介。頭と胴へのヒットは2点でそのラウンド勝利、腕・足は1点
  • 攻撃がヒットしても、そのままの体勢から一回だけ反撃できる。反撃がヒットすれば相打ち。これは例えば自分の頭部を晒して相手の足を攻撃するといった無謀な攻撃で勝てないようにするため。
  • アドバンスルールでは、頭と胴へのヒットが3点となり、相対的に腕・足のポイントが下がる。パンチ、キック、レスリングを使えるといった違いがある

Chapter 12: 鎧無し・軽装鎧・重装鎧の戦闘術の違いについて

  • プレートに対して、左手で刀身の中央を掴んで使う「ハーフソード」の技術。手槍のように使って、鎧の合間を突いたり、レスリングで倒したり。

参考

nowsprinting-ma.hatenablog.com

*1:うまく表現できませんが、鍔迫り合いのような(でも異なる)、剣を接触させた状態・技術

*2:このように出自を分けて教えてくれるのはとてもありがたい

ソード&ダガーとエスパダ・イ・ダガ

フィリピン武術カリ(もしくはアーニス/エスクリマ)にはスペイン統治時代に伝わったスペイン剣術の影響が強く、その中に、片手に剣もしくは同サイズの棒、もう一方の手にナイフを持つ「エスパダ・イ・ダガ*1」というスタイルも含まれます。

先日、キャッスル・ティンタジェルさんで体験させていただいたヨーロッパ剣術の中には「ソード&バックラー*2」のスタイルがありました。時代を下って盾が短剣に変わって「ソード&ダガー」となり、それがフィリピンに伝わったようですが、それほど単純な話でもなさそうなスタイルの違いが見られたので少し調べてみました。

きっかけとなったのはこの動画。「ソード&ダガー」対「ソード&バックラー」スタイルのスパーリングです。

www.youtube.com

バックラー側は構えによっても異なりますが、バックラーを体から離して相手に向ける基本的な構えでは左足が前になっています。一方でダガー側は常に右足が前であり、明らかに使いかたが異なることが見て取れます。

そして、後述しますがカリのエスパダ・イ・ダガともずいぶん違う印象を受けました。

HEMA

予備知識として。西洋剣術、中世ヨーロッパ剣術などと書いていますが、一般に「歴史的ヨーロッパ武術」/ “Historical European Martial Arts (HEMA)” と呼ばれるカテゴリがあり、伝承が途絶えていた中世ヨーロッパの武術を、史料・文献などを元に復刻する活動をしている人・団体が多数あります*3

その人・団体が想定している時代によって使用する武器や技法は異なっており、例えば前述のティンタジェルさんでは13〜15世紀を想定されています。

上に貼ったような動画の場合、それが簡単には読み取れないことも多いので、参考程度に見ておくのがよさそうです。

ソード&バックラー

順を追って「ソード&バックラー」から。このスタイルは13世紀ドイツ剣術のフェシトビュッフ(指南書)である『I.33』に書かれているもので、当時のベーシックなスタイルだったようです。

『I.33』の内容は下記サイトで閲覧できます。

wiktenauer.com

バックラーを持つ左腕は伸ばし、右手の剣で攻撃するときにもその籠手を守るように使います。そのため、盾を持った側、つまり左足を前に出すスタンス(『I.33』の挿絵からは判断しきれないところですが)になることは自然で、

“兜の左側に通気の穴を開けずに右側にのみ穴を開けたり、イタリア式の鎧の左側が右側に比べて頑強な作りになっていたり”

『続・中世ヨーロッパの武術』 p.11 より引用

と、鎧の作りまでそれを前提にされたものだったようです。

それが14世紀に入ると鎧の強化(プレートメイルなど)により盾の存在意義が薄れて廃れ、武器もまた鎧に対抗するための両手武器(ロングソード、ポールアームなど)が使われるようになります。

ただ、これは戦場での話であり、市中や決闘ではバックラーは使われ続けたようです。

時代が飛びますが、『続・中世ヨーロッパの武術』第3部 第9章「サイドソード*4とバックラー」では、ルネッサンス期イタリアの技が紹介*5されています。 ここでは右足前の構えや技が見られますが、これには15世紀初頭から剣の鍔の形状が徐々に右手を守る形に変化したことと関係していそうです(鶏が先か卵が先かの話もありそうですが)。

なお、上に貼った動画のソード&バックラー側は、このルネッサンス期イタリアの技法を取り入れているように見えます。

ソード&ダガー

ダガーと剣を同時に使う技法が描かれた最初のフェシトビュッフは、タルホーファーの1467年のフェシトビュッフで、左手にバックラーとダガーを握って”

『続・中世ヨーロッパの武術』 p.106 より引用

また、

“北イタリアのフィオレ・ディ・リベリ(Fiore di Liberi)は15世紀にフェラーラのニコロ3世の宮廷剣術指南(マエストロ)に任命された。彼の書『フロス・デュエラトールム Flos Duellatorrym(戦いの花)』は、当地の剣豪「ジョバンニ・デッレ・バンデネーレ(黒隊長ジョバンニ)」をモデルに、素手の組討、ダガーを用いた二刀流、ロングソード、長柄武器などを使った完全なもので、1410年に出版された”

西洋剣術 - Wikipedia より引用

とあり、15世紀イタリアにすでに「ソード&ダガー」のスタイルはあったようですが、一般的には16世紀からと言われており、『続・中世ヨーロッパの武術』第3部 第8章「サイドソードとダガー」で紹介*6されている技法もすべて16世紀のものです。

ここでのダガーは全長50cm程度と長めのもので鍔もあり、相手の攻撃を受け流す*7ことが主用途です。動画のように右足前のスタンスですが左腕も前に出し、両手の剣の切先が揃うような構えをしています*8

別の(恐らく16世紀を想定している)ソード&ダガー同士の試合動画を見ると、主武器がレイピア(それ以前の片手剣よりも長い)であることもあってか、ダガーで直接攻撃する間合いになることはほぼありません。

www.youtube.com

16世紀ヨーロッパの「ソード&ダガー」におけるダガーの役割は(スタイルは違えど)バックラーに近いものと考えてよさそうです。

エスパダ・イ・ダガ

フィリピンにスペインのマゼランが喧嘩を売って返り討ちにあったのが1521年。以降徐々に植民地化が進みますが、その中でスペインの武術とフィリピン土着(イスラム系)の武術が混ざって「カリ」の原型ができたと言われています。

カリと言っても流派が多く、私が触れた範囲での印象でしかありませんが、カリの「エスパダ・イ・ダガ」のスタイルは、前述の「ソード&ダガー」とはかなり印象が異なります。 左手に持つ短剣は短く鍔もないナイフであり、相手の攻撃を刀身で受け流すことは無く(受ける場合は相手の内籠手に刃を当てて受ける)、間合いを詰めたときには攻撃に使う、というものです。

一方、古い剣術のスタイルを残している「カリス・イラストリシモ(Kalis Ilustrisimo)」という流派では「プンタ*9・イ・ダガ」と呼ばれ、大きめの短剣を使い、その刀身で相手の攻撃を受け流す技法も見られます。

www.youtube.com

カリの諸流派はひとつのスタイルが分派したものではなく、フィリピン各地で個々にスペインの影響を受けて醸成されたものと考えられます。従って、ヨーロッパにおける最終的な「ソード&ダガー」のスタイルが伝わったのはごく一部の土地(時代)だった、という可能性もありそうです。

つまり、中世ヨーロッパ剣術の「ソード&ダガー」と、カリの「エスパダ・イ・ダガ」は、ほぼ別のものと考えたほうが自然な気がしています。

その後のヨーロッパ剣術

スペイン剣術

15世紀からイタリアで発展した剣術の技法はスペインにも伝わり、16世紀半ばに「スペイン剣術」と呼ばれるスタイルが成立したとされています。

“スペイン剣術の戦い方は以下の通り。まず彼らは、できる限り勇敢に、足を広げずに背筋を真っ直ぐ伸ばして立つ。そして彼らの足は決して止まることがなく、あたかもダンスを踊っているかのようだ。そしてレイピアと腕を、一直線に相手の顔か腕に伸ばすのだ”

『中世ヨーロッパの武術』 p.47 より引用

といった印象らしく、これは現代のカリとはかけ離れたスタイルと言えます。この時代のスペイン剣術がフィリピンに伝わって今のように変化したのか、そもそも伝わっていないのか、気になるところではあります。

また、スペイン剣術成立以前の話として

“それ以前の武術は「古武術」(Esgrima Antigua)と呼ばれ、残念ながら、現在ごく断片的な資料が残るのみです。スペイン・ポルトガルのあるイベリア半島は、かつてイスラム勢力に支配されていたので、当地の「古武術」には、おそらくイスラム起源の武術の影響があったと思われます”

『中世ヨーロッパの武術』 p.47 より引用

とあり、こちらもとても興味深い話です。イスラム

スモールソード

17世紀になるとレイピアは廃れ、より短く軽い「スモールソード」へと変化します。ここまで来ると、現代のフェンシングに近いものになってきたようです。

また同時に、

ダガーを補助武器として使う技法は、レイピアがスモールソードへと変わる頃に廃れていきました”

『続・中世ヨーロッパの武術』 p.109 より引用

とのことで、「ソード&ダガー」の時代も終わりです。

まとめ

今まで漠然と、中世ドイツ剣術→イタリア剣術→スペイン剣術→カリ、という流れだと認識していたのですが、カリにおけるスペイン剣術の影響は意外と少ないのかも知れません。 また、いわゆる「スペイン剣術」の完成形ではなく、まだルネッサンス期イタリア剣術が残る形で伝わったのではないかとも。

ただ、例えば太刀筋を番号で呼ぶ文化はヨーロッパ剣術発祥でカリにもあるものです。このような、技法自体でなく、体系的な教え方・伝え方に関する部分でヨーロッパ剣術の “技術” の影響力が強かったのかも知れません。

参考

中世ヨーロッパの武術

中世ヨーロッパの武術

続・中世ヨーロッパの武術

続・中世ヨーロッパの武術

Walpurgis Fechtbuch (MS I.33) ~ Wiktenauer ~☞ Insquequo omnes gratuiti fiunt

Antonio Manciolino, Opera Nova…De l'armi d'ogni sorte, 1531

Vincentio Saviolo, His Practise, in Two Books, 1595

Giacomo di Grassi, His True Arte of Defence, 1594

Opus Amplissimum de Arte Athletica (Cod.icon. 393)

公開!フィリピン武術の全貌 【DVD付】 (BUDO-RA BOOKS)

公開!フィリピン武術の全貌 【DVD付】 (BUDO-RA BOOKS)

Secrets of Kalis Ilustrisimo: The Filipino Fighting Art Explained (Tuttle Martial Arts)

Secrets of Kalis Ilustrisimo: The Filipino Fighting Art Explained (Tuttle Martial Arts)

*1:Espada Y Daga: Espadaは剣、Yはand、Dagaは短剣の意

*2:直径30cm弱ほどの小型の盾

*3:日本武術は伝承が途絶えていないことを喜ぶべきなのでしょうが、すべてが正しく伝承されているとも限らないですし、そもそも何を持って「正しい」と言えるのか、悩ましいところ

*4:この書籍においてサイドソードとは16世紀イタリア市民の護身・決闘用の片手剣のことを指し、これが時代とともにレイピアに姿を変えますが、当時の史料・文献では明確に区別されていないため、一部同列に扱っています(p.100〜102)

*5:出典は、Manciolino Antonio, The Complete Renaissance Swordsman(1531)

*6:出典は、Vincentio Saviolo, His Practise(1595)、Giacomo di Grassi, His True Arte of Defence(1594)、Mair, Paulus Hector. Opus Amplissimum de Arte Athletica, vol.2(1540s)

*7:そのため「パリイング・ダガー(parrying dagger)」や、フランス語で左手という意味の「マンゴーシュ(main gauche)」とも呼ばれます。このあたりは『中世ヨーロッパの武術』p.303, 324のコラムに詳しい

*8:宮本武蔵二天一流の構えに少し似ています。二天一流と同じく切先を交差させて十字受けする技もあるようです

*9:Punta: 「先の尖ったもの」の意で、レイピアや手槍など「剣」よりも広い意味の言葉

西洋剣術体験

キャッスル・ティンタジェルさん主催の『特別ビギナーレッスン』に参加してきました。

ティンタジェルは、西洋剣術*1および、鎧を着て剣で殴り合うアーマードバトルのスクール。西洋剣術のほか日本武術も教えていて、今回のビギナーレッスンでもどちらか一方を選択できたのですが、今回は「西洋剣術 騎士道コース」を選択しました。

本レッスンは「ロングソード、ソード&シールドの初歩の技を学ぶ」ということで、鎧を着てのスパーリングは無し。代わりにレッスン後に行われたメンバーさんのトーナメントを見学できました。

スタンスとステップ

  • 立ち方は、肩幅の半身。後ろ足は90度横を向き、つま先重心。日本の剣術と異なるところで、すでに無意識でやっている部分なのでなかなか慣れず。
  • 前後の移動、斜め前・後への移動+腰を切って逆の半身になるなど、いくつかのパターンを練習。

両手剣

  • 重さは1.7kgくらい? 日本刀より重いが重心が手元に近い。片手斬りはできるけど振り回せるほどではない感じ。
  • 右手メインで持つ
  • 持ち方は日本刀に近い(ハンマーグリップではない)が、右手親指は立てて鐔のあたりに置く。これは、
    • 親指で刃の向き(両刃なので)をコントロールできるように
    • 剣を水平に近く寝かせる構えが多いので、安定性のためもあるかも?(未確認)
  • 斬撃は、剣の振りが先。剣を前に振り出してから歩み足に進み、腰を切って斬り下ろす
    • 剣の重みで前に出るようなイメージだとうまくいくようでしたがこれも慣れず
    • 基本的に、相手の頭部を狙う
  • 構え何種類かと、そこからの振り方を練習
    • 斬り下ろしのほか、相手の攻撃を受け止めつつ切先は頭部に攻撃する技技など
    • カリ(アーニス/エスクリマ)で言うアバニコ(Abanico)のような技もありました(ツヴェルクハウ?)

片手剣&バックラー

  • バックラーは小さい(直径30cmもない)盾。遠くに構える
  • バックラーで右手の籠手を守るように使う。斬撃も刺突も、バックラーの影に右籠手が収まるように使う。
  • 剣は両手剣と同じく、親指は立てて鐔あたりに置く
  • 基礎的な技はロングエッジ(自分から遠い側の刃)を使うが、ショートエッジ(自分に近い側の刃)を使う技もある
  • 斬撃も両手剣と同じく、剣の振りが先
    • 体が先だと相手に斬られるとジェイ師
    • 鎧なしの場合、肘と手首でシャープに振る
    • ヘヴィアーマーの場合、より強く振る必要があるので全身で振る
    • 斬り下ろし*2、斬り上げを練習
  • 刺突は、剣を水平に使うのがベーシック。相手の盾を避けて突く。
    • カリにおける突き技の形ととてもよく似ている*3
    • 右上から、左下から、右下から、左上からの突きを練習

レスリン

  • レスリング(日本剣術的には組討)も剣術の範疇で教本にはあるが、試合で使うと大怪我をするので使用禁止。例えば、
    • 相手の盾を掴んでひねる(盾は輪を通して掴んでいるので手首が折れる)
    • 盾で相手の剣を抑え、自分の剣を差し込んでディスアーム*4
  • 蹴り技は3/4が急所、残り1/4が膝への攻撃で、いずれにせよ危険なので禁止。相手を押し退けるような蹴りはok。

競技のレギュレーションなど

  • 武器カテゴリは、ダガー、片手剣&盾*5、両手剣、槍、ポールアーム(ハルバード等)の5種類
  • 競技カテゴリは防具による。鎧なし、ライトアーマード(チェーンメイルやフェンシングの防具)、ヘヴィアーマード(プレートメイル)
    • ルールが違う(ポイント制など)
    • 使用武器の材質も違う。鎧なしではラタン+緩衝材、ライトではプラスチック製、ヘヴィではスチール製
      • スチールは、鉄パイプを潰したもの
      • あくまでも、セイフティな、トレーニング用の、銃刀法的に問題ないもの
  • 西洋剣術は13世紀のテキスト『I.33』などが教本。武器の形状などは13〜15世紀の史料に出ているものに限定される
    • カリで言う「エスパダ・イ・ダガ」、片手剣とダガー(パリーイング・ダガー、マンゴーシュ)のスタイルは時代が違うので対象外だそうです。レイピアは16世紀ごろらしいので。

所感

西洋剣術は(慣れないながらも)納得できる理合があって、ひとつの武器術としてもう少しちゃんと練習してみたい。しかし日本の剣術*6との違いが、変なクセにならないかという不安もあるので悩ましいところ。

この日はできなかった鎧を着てのスパーリングも、ビジター参加などでも体験できる(もちろん入会するより割高ですが)そうなので、また時間を見つけて体験してみたい。この経験は剣術に活きるはず。

キャッスル・ティンタジェルさんでは、目白の本部でのメンバー募集のほか、名古屋支部、仙台支部クラスを近々オープンするとのことで、こちらも募集しているそうです。

www.castletintagel.com

参考

ティンタジェルのジェイ師による両手剣のDVD。Amazonでは品切れで割高ですが、出版社直販なら定価で買えます

babjapan.tp.shopserve.jp

かなり前に購入して積んでる本

中世ヨーロッパの武術

中世ヨーロッパの武術

続・中世ヨーロッパの武術

続・中世ヨーロッパの武術

ざっと読んだけどアーマードバトルに関してはちゃん書かれてるっぽい

*1:ドイツ剣術がベースのようですが、もう少し広く中世ヨーロッパにおける剣術

*2:右上から斜めに斬り下ろし。恐らく鍔の形状や兜をつける前提なので、真向に斬る太刀筋はなさそう

*3:カリに残っている、が正しい表現ですが

*4:カリの技と類似しており、密かにテンション上がりました。カリにあるディスアーム技は、合気道などが近世になって流入した技かと思っていましたが、西洋剣術起源の技も十分にありそう。でも殺し合いにおいてディスアームを積極的に狙う意図はよくわかりませんが…

*5:今回体験したバックラーだけでなく大きめのものも。扱い方も変わるようです

*6:少なくとも現存している流派の教え

九宮八卦掌・戦術セミナー

7/8に開催された『九宮八卦掌・戦術セミナーIN文京』に参加してきたのでメモ。

八卦掌(Ba-gua-zhang)とは、19世紀前半(清朝後期)に董海川(Dong Haichuan)によって創始された比較的新しい門派で、尹派、程派をはじめ、多くの分派があります。

九宮八卦掌は、分派のうち史派八卦掌の流れをくむ門派で、九宮とは八卦を八方向に配置した図の中央を九宮と呼ぶことから来ているそうです。日本には、趙玉祥老師 - 小幡良祐老師(当セミナー主催)と継承されているとのこと。

セミナーでは、八卦掌独特の歩法、その歩法を使った攻撃回避と反撃、内功、発勁まで、まさに八卦掌でどう戦うのかという、武術としての八卦掌を体験できました。

歩法

八卦掌のコンセプトとして「相手の正面で攻撃を受けることを避け、相手の側面から攻撃する(避正斜打)」があり、これを実現するために以下のような歩法があります。

  • 後ろ重心の立ち方
  • 前足を内側に向けて転回する擺歩(はいほ)
  • 逆に前足を外側に向けて転回する扣歩(こうほ)
  • 後ろ足を水平に上げる「平起」と、前足を水平に下ろす「平落」

動作をひとつひとつ練習した後、二人一組で「攻撃をかわして側面にまわって攻撃」といった応用の練習も行なう、という流れでセミナーは進行されました。

擺歩・扣歩による転回および相手の側面にまわる動作は、とても合気道的な感触で、平起平落も日本の古武道で「腰を安定させる」と言われることに近いものを感じました。

合気道の元となった大東流合気柔術も(諸説あるそうですが)明治になって武田惣角が他流の技を統合して編纂したものらしく、八卦掌の成り立ちと似ているのも何か武術の流れのようなものがありそう興味深いです。

葉底蔵花

映画『グランド・マスター』でチャン・ツィイー演ずる宮若梅(ゴン・ルオメイ)の台詞でだけ出てきた技。実際は秘伝のようなものではなく基本的な、でもそれだけに奥の深い技とのことで、これを練習。

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葉底蔵花は最終的に標指での突き技なのですが、その手の形には暗器(隠し武器)を持つことが想定されていたりと、武器術好きとしても興味深い技でした。

空間把握

視点(日本の古武術で言う「遠山の目付け」)、円周をまわるとき意識を円の中心に向ける、一人の相手だけでなく、エリア全体を把握する*1、といった内容。

また内家拳的な部分として、呼吸などによって空間把握の向上などもありました(が、うまく書けないので割愛)。

発勁

八卦掌を伝承されている方々が、おおむね他の門派(形意拳など)も習得されていることから、八卦掌自体に打撃のイメージがなかったのですが、ちゃんと発勁もパッケージされていました。

付け焼き刃でできるものではないですが、地面 - 足 - 背中 - 掌と力を伝えることによる発勁を少し練習。

また、デモンストレーションとしてですが、構えからまっすぐ打つ、という攻撃でなく、変化しながら相手の構えの隙間から攻撃するといった形も見せていただきました。

所感

八卦掌はずっと気になっていた*2ものの、縁もなく、また自分に合うのか?という思いもあって縁を作ることもなかったので、今回このセミナー*3に日程が合って非常に良い経験ができました。

八卦掌のイメージは「よく回る」くらいのものでしたが、それが歩法から来る合理的なものであり、合気道に近しい理合があること。また、発勁までパッケージされた、まぎれもない武術であることを体感できる良いセミナーでした。

小幡老師の「旺龍堂」では、今回のようなセミナー開催のほか、通常の稽古も特に入会・入門や月謝制ではなく1回毎の「講習費制」で運営されているとのこと。 非常にありがたいので、間隔が空いてでも(身につくのは遅くなるでしょうけど)時間を見つけて習いに行きたいところ。

ohryudo.com

参考

グランド・マスター [Blu-ray]

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イップ・マン 葉問 [DVD]

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月刊 秘伝 2015年 09月号

月刊 秘伝 2015年 09月号

*1:セミナーでは会場内でしたが、屋外では木立の中で木や根を把握しながら動くとか

*2:むしろ詠春拳より前から。中国拳法と言えば酔拳八卦掌か、くらい

*3:今回のような「戦術セミナー」は初の試みとのこと